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10月10日は「目の愛護デー」藤沢市眼科医会会長 藤川先生インタビュー

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藤沢市眼科医会 会長/医学博士・眼科専門医 藤川眼科 院長 藤川英津子先生

藤沢市眼科医会 会長 藤川英津子先生に聞く
「無症状だからこそ! 将来を見据えた眼病予防対策を」

10月10日の「目の愛護デー」は、戦前、中央盲人福祉協会が失明予防の運動として定めた「視力保存デー」にはじまる失明予防のための目の記念日です。「10」と「10」を横にすると「眉と目の形」になることが由来だそう。現在では、日本眼科医会による目の健康や眼病予防の啓発活動が日本全国で展開されています。
目の愛護デーに関するイベントに20年以上前から取り組んでいる藤沢市眼科医会でも、10月28日(土)に藤沢商工会館ミナパークで市民公開講座を開催します。それに先駆けて、藤沢市眼科医会会長の藤川英津子先生に眼病予防の必要性について話を聞きました。

Q. 日本人の大きな失明の原因について教えてください

緑内障「視野が欠ける自覚症状」があったらもう初期ではない!

A.日本人の失明の二大原因は、緑内障と糖尿病性網膜症です。
緑内障は、眼底にある網膜の視神経にダメージが起きて、視野(見える範囲)が欠けていく病気のことで、基礎疾患が何もなくてもかかります。初期は視野障害があってもまったく自覚していない方がほとんどですが、実は40歳以上の20人に1人は緑内障と言われています。
「視野が欠けている、狭い」という自覚症状を感じたら、それは初期ではないんです。初期には症状がない方がほとんどです。これが定期的な眼科検診をお勧めする理由です。ひとたび傷ついてしまった視神経は、残念ながら回復することはありませんから、初期の段階で緑内障を発見し、治療や定期検査をして、悪化進行を抑えなければなりません。

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緑内障の検査には、眼底検査、OCT(光干渉断層計という装置で眼底の立体構造をみる検査)、眼圧、隅角検査、視野検査などがあります。緑内障のタイプは一つではなく、ご自分の緑内障についてよく知っておく事も大切です。昔は緑内障の人は眼圧が高いと考えられていましたが、今では、眼圧が正常なタイプが多いことがわかっています。眼圧が正常でも、緑内障になったら眼圧をさらに下げる治療が必要です。

日本緑内障学会では、世界緑内障週間(3月11日~17日)に合わせて「ライトアップinグリーン運動」を展開していて、全国のランドマークがライトアップされるのですが、江の島シーキャンドルも同時期に緑色にライトアップされるので注目してください。

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2023年世界緑内障週間キャンペーンポスター
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2020年世界緑内障週間に、グリーンにライトアップされた江の島シ―キャンドル

老眼でも疲労でもない。糖尿病から密かに進行する「糖尿病網膜症」

次に糖尿病網膜症についてです。
糖尿病になると全身の血管にダメージが起きるのですが、目の網膜にある血管にも傷がつき、血液成分が漏れて眼底に出血や白斑、浮腫などが生じて進行し視力が低下します。緑内障同様、初期は気づきにくく、視力がおちても老眼や眼精疲労と思いこんで眼科受診をしないまま、悪化進行してしまう事があります。
糖尿病網膜症は、糖尿病腎症・神経障害とともに糖尿病の3大合併症のひとつで、悪化すると最悪の場合、眼底出血や網膜剥離を伴って失明に至る場合もあります。
糖尿病性網膜症は進行の程度により大きく初期から三段階に分類されます。ある程度進行してしまうと、レーザー治療やさらには手術を必要とすることもありますが、そうなる前にとにかく糖尿病の適切なコントロールが大切です。糖尿病の患者さんは、年に1回は眼科を受診して網膜症の検査を受けることが推奨されています。これは、早く網膜症を見つけて適切な治療を行うことで、視力低下や失明が起きるのを防ぐためです。

バカボンのパパも勧める「眼底検査」

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緑内障や糖尿病網膜症は眼底検査が必要です。眼底検査は、視力検査だけでは気づけない病気を早期発見してくれる大切な検査です。天才バカボンのパパが「40歳過ぎたら眼底検査を受けるのだー!」とうたっている日本眼科医会によるACジャパンのTVCMをご覧になったことがありますか?
眼底検査は、視力検査だけでは気づけない病気を早期発見してくれるもの。症状がなくても、40歳を過ぎたらしっかり受けてほしいという意図で作られたもので、親しみやすく、わかりやすいですね。多くの方に眼底検査を意識していただきたいです。眼底検査は点眼薬で瞳を開いて行うことがあり、検査後しばらく目がかすんだり眩しくなったりするのですが、それがイヤで眼底検査を避けてしまう人がいるようです。瞳を開かないで眼底の広い範囲をチェックできるカメラや立体構造をみるOCTもありますので、眼科で相談してみましょう。

Q.子どもの近眼が増えていると聞きました。そもそも、子どもの近眼の「何が」問題なのでしょうか。

世界中で増加している子どもの近眼

A.近視は眼軸(目の前後の長さ・奥行き)が長過ぎる目です。小さいころから近眼(近視)になってしまうと、進行して強度の近視になりやすく、大人になってから網膜剥離、緑内障など、失明につながるような目の病気を発症するリスクが高くなるからです。
世界中で子どもの近視が増えているのをご存じですか?
「20㎝より近いところで30分以上連続して近くを見続ける」ことが近視が進む要因の一つだと分かっており、これはデジタルでも紙の本などでも共通して言えることです。ただ、最近学校でもデジタル端末を利用する時間が増え、小さな子供もスマートフォンを持つ時代になり、それに伴って近くを見続ける時間が長くなっている事は確かです。日本眼科医会には、デジタル端末を利用する子どもたちの目の健康について、啓発マンガ 『ギガっこ デジたん!』などのコンテンツが色々ありますので、検索して学校やご家庭で活用して下さい。

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近視啓発冊子 ギガっこ デジたん!大百科

近視の発症を防ぎ予防する研究も進んでいます。その一つは「屋外活動」で、統計的に屋外にいる時間が長い子どものほうが近視を発症する割合が低いことがわかってきました。
理由として考えられているのが「日光」で、週に11時間以上、明るさ1000lx(ルクス)以上の光を浴びることで近視の発症が抑えられることがわかっています。近視の予防には日光にあたり、外で遊ばせることが最も近道かつ確実な方法といえます。
子どもの近視を防ぐことは、大人になってから近視が原因で起きる網膜剥離、緑内障など、失明につながるような目の病気を発症するリスクを下げることになるのです。将来にわたって目の疾患に悩まないようにするために、できるだけ近視にならないようにする予防が必要なわけですね。
ちなみに、近くを見続けていると、目のピントを調節する『毛様体筋』という筋肉が緊張して一時的に近視のような状態になることがあります。これは「偽近視」と言われるもので改善することもできますが、初期の近視や軽い近視がみな偽近視だということではありません。眼科で検査するとわかりますが、その状態なら、目薬で緊張を和らげてあげることで改善することもできます。
偽近視か、近視か、はたまた遠視や乱視なのか、他に目の異常はないのか。検査しないとわかりませんし、症状によって治療法が変わってきます。ですから、お子さんの視力が落ちた時にはすぐ眼鏡屋さんに行くのではなく、必ず眼科で検査を受けて下さい。

気になる目の症状。簡単にサプリに頼らず、まずは眼科へ!

眼の病気は自覚症状がなかったり、自覚症状と「一致しない」ことがよくあります。
サプリメントを飲む人も多いですが、安易にサプリに頼るのではなく、まずは自分の目の状態を知ってから正しいサプリを選んで欲しいですね。
藤沢市眼科医会では、10月10日の「目の愛護デー」にちなみ、10月28日(土)市民公開講座をミナパークで開催します。テーマは『白内障と緑内障を中心に』参加費は無料です。
「人生を楽しむために、目の病気と予防について学びましょう。働き盛りの世代の人にも聞いてほしいですね」と藤川先生。認知症予防には感覚器の機能低下を防ぐことがとても大切だといわれています。
人生100年時代、いつまでも健康でいるために目の健康には気を遣っていただきたいと思います。日本眼科医会のHPには、全国で開催される関連イベントが掲載されていますので、興味があればチェックしてみてください。

日本眼科医会のHP
https://www.gankaikai.or.jp/aigo/

公開日2023/09/20

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